最凶顔

シガー(ハビエル・バルデム)

アカデミー助演男優賞を獲った映画

「ノーカントリー」が日本で公開されて1ヶ月、

ようやく観てきたんだけど

話題の悪役「シガー」は想像以上に

怖くて気味が悪いキャラクターだった〜。

ワタシの中では「羊たちの沈黙」のレクター博士

「たそがれ清兵衛」の余吾善右衛門と並ぶ

夢に見そうな三大悪役になった。

いや、この映画を観た夜、

実際に怖い夢を見ちゃったもん。

自分がなぜか連続殺人の犯人と

知り合いになっちゃうような嫌な夢を。

いや〜、それくらいあとをひく

ショッキングな映画だった。

なにが怖いってさ、普通サスペンス映画や

アクション映画で主人公は死なないよね。

命からがらの目にはあうけど、

主人公は生還するのが

商業映画のお約束でしょ?

ところがこの映画は主人公が途中で

突如として死んじゃう。

(まあ厳密に言うと、語り部的存在の

トミー・リー・ジョーンズ演ずる

保安官が形式上の主役なんだろうけど

一度もこの悪役と対面しないで終わる)

つまり、観客は感情移入していた

ハードボイルドで屈強な主人公が

映画の途中からいなくなってしまうという

意外で、なんとも宙ぶらりんな事態に直面する。

そりゃ、ハリウッド映画にも善と悪が戦って、

レクターシリーズのように、悪が勝つ話もあるよ。

だけど、主人公もいないのに、

生き残った悪役がさらに

さまよい続ける映画なんて前代未聞だ。

ジェットコースターが到着するはずの元の場所を

通過して別のコースを走り続けているような感じ。

この映画の構造が、観客になんとも形容しがたい

恐怖感と不安感を

もたらす結果になっていると思う。

映画の原作のタイトルは「血と暴力の国」

というらしいんだけど、ワタシには

まさにそう形容されるアメリカの現実が、

この映画が終わったあとも

このストーリーを引き継いでいるような気がして

永遠に終わらないんじゃないかという

錯覚とも洞察ともいえない感覚が残った。

もう、怖くて一生アメリカなんか行けないよう。

そんな殺伐とした気分になった。

・・・で、やっとホッとしたのは

最凶悪役のシガーを演じた

ハビエル・バルデムさんの

インタビュー記事を読んだ今日だった。

「もともと暴力はあまり好きではないし、

映画の中の暴力的なシーンも好きではない。

銃が嫌いで、怖くて触れない、

とこぼしたら、小道具係に

やる気があるのか

と言われたよ。

パン、パンという銃声も怖くて嫌いなんだ」

だって。

スペイン出身の俳優さんだからね。

アメリカほど銃は身近でないんだろうか。

映画評論家の水野晴郎さんの

決めセリフと似てるけど

心底こう思ったよ。

いやあ、映画で

ホントに良かったですね




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