半月顔

忌野清志郎

テレビのニュースショーで突然、

安住アナウンサーが真顔になって

清志郎の訃報を読み上げた(5/2)。

夜の11時半くらいだったろうか。

自転車で深夜の道を走った。

涙をためたような半月が

夜空でうつむいていた。

同い年のマスターが

カウンターの向こうで待っていた。

81年、RCサクセションの武道館ライブの

熱狂の渦の中に自分もいた、というのが

自慢のマスター。

土浦でブレイク前のライブを

ガラガラの二階席で応援したのが

自慢のワタシ。

場所も環境も違うけど

それぞれ、青春時代の記憶と

RCサウンドが一体化している二人が

今夜はどんな表情したらいいか

カウンターを挟んで戸惑っている。

マスターの宝物、武道館ライブのテープを

何度も聴いて、献杯を何度も繰り返して

三時過ぎ、店を出た。

ひっそりと静まりかえった夜道を帰るとき、

初めて意味がわかった。

丸いカクテルグラスを

照明にかざして横から眺めると、

まるで今夜の半月のようじゃないか。




「ジンライムのようなお月さま」


夜空に半月を見つけるたび

これから一生、

清志郎を思い出すだろう。




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